「松煙墨」

松の樹脂を焚いて、採ったススから造った墨。松煙墨のススは粒子が粗く、不揃いなので、油煙墨のような安定感はなく、磨っていると突然ガリガリと音を立てて、硯を傷めることもあります。黒の深さや安定感では、油煙墨に一歩譲る面がありますが、松煙墨には、淡い色調の不思議な柔らかさがあり、墨の雰囲気がよりよく出せるのです。宣紙や画仙紙に出会うと、おだやかな冴えを見せるこの墨、文人たちが好んで使うのも、この微妙な墨色に魅かれてなのでしょう。